いつものように、朝からルキアはブラックコーヒーを入れる。一護は毎朝

ブラックコーヒーを飲んでいる。一護専用のマグカップは、内側がペパーミントグリーン

で、外側がブラックの四角い形をしている。少し光沢を放つそのマグカップは

長年愛用してるらしい。

 

 

 

「今日のご飯はパンとサラダと目玉焼き。だ。あとはバナナジュース。」

ルキアは出来た食事をアイボリーのランチョンマットの上に並べる。

 

一護は、「おう」と言いながら、コーヒーをすする。読んでいる新聞から目を離さない。

 

 

「一護!!読みながら食べたのでは、おいしくなかろう!!行儀も悪い!!!」

 

ルキアが少し怒りながらつっかかると、一護はバサッと新聞を折り畳み、

すごい早さで朝食をたいらげた。

 

「わり、ちょっと今日忙しいんだ。ごちそうさま。」

一護はまだモゴモゴ口を動かしながら、診察室の方へと入って行った。

その様子を見て、ルキアは少し違和感を感じた。いつもは少し他愛もない話をし

てからだというのに。最近はちっとも顔を見て話そうとはしない。

夏休みだから、子供の外来患者が多い事はわかっているけれど、少し妙だ。

 

ルキアは一護が食べ終わった食器を流し台に運んだ。食事は丁寧に平らげてある。

もしかして、私が嫌いなのかも、と思ったが、そんなそぶりでもない。

皿を洗いながら考えたが、らちが明かない。

 

時計が8時をまわった所で、ルキアも部活に行かなければならないので家を出た。

 

 

 

 

 

 

………おかしい。絶対におかしい。

 

一護は、午後の診察がひと段落してから、一人考え込んでいた。

今日は予約患者もおらず、今は外来を待つだけだった。

 

一護はタバコをふかしながら考えている。吸っているタバコは、パッケージの丸い

模様がかわいらしい。ユズには止められていたけれど、家に一人になってから

は頻繁に吸うようになった。きっとさびしさをまぎらわすためだと、自分でも思う。

最近、ルキアの存在が、日に日に自分の中で大きくなるのを感じる。

気持ちをしっかりと、自分で把握してからだ。正直どうしていいかわからない。

そういえば、石田の話を最後まで聞いていなかった事を思い出す。

 

 

━━━あいつ休みあんのかな。まずは午後の診察をすべて終えてから連絡しようかな・・・。

でも、なぁあいつに相談みたいになるの嫌だし・・・。っていうか、俺が死神ってなんだよ。ルキアも死神なんだろ。

あんな可愛い死神いるかよ・・・。ってこの思考回路がヤバいんだよ!

 

 

一人、地団太を踏みたい気持ちでいっぱいになっていると、突然チャイムがなった。

外来ではないので、タバコを灰皿に置きっぱなしにして、玄関へ向かう。

玄関には、珍しい人物がたっていた。

 

 

「おにいちゃん!!元気にしてたぁ!?」

 

明るい声のトーンで話しかけてくるのはユズだ。

 

「一兄、居候させてるらしいじゃん??大丈夫なわけ??」

 

いつもの低めなトーンはカリンだ。

 

「お、おぅ。大丈夫だ。生意気なクソガキだけどな」

 

「そんな事言ったらダメでしょ!!聞いた所女の子なんでしょ!?優しくしてあげなきゃ!!」

 

ユズはいつものようにしかりつけるように一護に言う。

 

「あー…」

一護が困ったように呆けていると、ユズは直ぐ様タバコを発見してまたしかりつけた。

 

相変わらずだね。一兄。隣にいたカリンがくすりと笑う。

 

会って30秒後の会話がコレだ。兄弟関係は何年たっても変わらないと思う。

ユズは一人で暮らしている兄の様子が気がかりで、たびたび訪れる。カリンは滅

多に姿は見せないものの、今日はユズに連れられてきたのだろう。三人そろうの

は母の墓参りぶりだ。

 

 

「ルキアちゃんっていうんだ〜〜珍しい名前だね。」

 

ユズはニコニコしながら言った。ユズとカリンの部屋を使用していいと言われて

いるルキアだが、自分仕様にしておらず。そのまま部屋はきちんと片付いていた。

それを見たユズが、ルキアの真面目な性格に感心していた。

 

「じゃあ今日はあたしが晩ごはん作ってあげる。」

ユズは満面の笑みで言った。カリンちゃんも食べて行きなよ。とも。

 

「まぁあたしもその子の顔、見たいしね。」

カリンも満更でもない様子でリビングのソファーに腰かけた。

 

「わかったわかった。あいつたしかいつも5時くらいに帰ってくるから。」

一護は仕方ないといった表情で、両手をかざした。

 

それを聞くとユズが、大変!!もうこんな時間じゃない。支度しないと。といいな

がら台所へ向かう。

 

そんな様子を一護とカリンは横目で見ていた。

 

「カリンはつくんねーの??」

 

「あたしは、パス。今日は休みたいしね。ところで一兄。どうしたの最近楽しそうじゃん??」

 

「は??」

 

「か、お、が。楽しそうって言ってるよ。そのルキアちゃんがすごく気に入ったのかな〜〜〜??」

 

大人になり、カリンは、肩まで髪をのばていた。その姿は大人っぽいものの、

昔のように人をからかう時の表情はかわらない。いたずらに訪ねる。

 

………っちがっ」

 

「はいはい。一兄はわかりやすくていいねぇ。」

 

そう言った瞬間。玄関から物音が聞こえた。ルキアが帰ってきたのだ。

 

 

「ただいま〜〜〜」

ルキアは玄関においてある二つの靴をまじまじと見ていた。

その瞬間、バタバタと足音がなり響く。

ルキアは初めて会うその人をぼんやり眺めた。薄い、色素の髪の毛をしており、

おっとりとした顔つきをしていた。長い髪の毛は腰までのびていて、軽くウェーブがかっている。

優しそうな人だとルキアは思った。

 

「あなたがルキアちゃん!?まぁ可愛いっ!!あたしね、おにいちゃんの妹のユズっていうの。奥にいる黒髪がカリンちゃん。」

 

奥からカリンと一護も出てきて、ルキアを出迎える。

 

「おかえり。」

 

「こんばんは。ルキアちゃん」

もちろんカリンも初対面で、少し笑い挨拶をした。

その後は、ユズがルキアになにかと世話を焼いていた。夕飯の手伝いをしよう

とするルキアをユズは必死で止めたし、ルキアは必死で手伝おうとした。

 

挨拶をした所で、カリンは妙な違和感を感じていた。

 

「ねぇ……一兄、寒くない??」

 

「は??今真夏だぞ。風邪でもひいてんのか?」

 

………違うけど…」

カリンは、今までにない感情がわきあがって来るのを感じた。

 

 

 

さみしいような。

 

暖かいような。

 

懐かしいような。

 

 

まるでおとぎ話のような。

 

 

 

そんな記憶。

雪を見ると頭が疼く。それと同じ気持ち。

 

 

 

 

脳裏にある風景が浮かぶ。

 

 

しんしん降る雪の真ん中に。立っていた少女がいた。とても綺麗で、聡明で。

小さくて。でも強くて。

 

こっちを見ると、切ない顔でにへらと笑った。いつもはキリッとした顔をして

いるのに。仲間内では時折そんな顔をした。

 

 

この少女の名前。

自分は知っている。ずっと前から知っている。忘れるはずなんてないよ。

忘れられないよ。だって大切なんだもの。すごく大切だった。

 

 

その少女の顔と、目の前の少女が重なる。

 

 

 

「あ…………」

 

 

━━━━━思い出した。

 

 

カリンはその瞬間一護を見た。一護は患者のカルテの整理をしている。

その平然としている面持ちを見て、カリンは叫びだしたい衝動にかられた。

 

一兄………。ねぇ、その子、すごく大切だったはずだよね?命に代えても護ろうとしていたよね?

あたし、忘れてないよ。

 

 

 

一兄のたった一人の恋人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

9話目アップです!読んでくださり、ありがとうございます。とても嬉しいです。

なんだかすごく甘くない感じの小説ですが・・・。すみません。ベタベタですし。

自分は人様の甘甘なモノを読むのが大好きなくせに・・・。(笑)

ラストは最初からうっすらと考えております。もうちょっとで終わるとおもいます・・・。

なんかよく分からないラストになるかもしれませんが、よろしくおねがいします・・。

 

では。